株式の併合・分割
株式の併合・分割
株式の単位が大きすぎたり、小さすぎたりすることで問題が生じている場合、
単位を変更する方法が考えられます。
この株式単位の変更の方法として
「株式の併合」「株式の分割」「株式無償割当て」があります。
株式の併合
株式の併合とは、
例えば、「10株を、1株とする」というように
数個の株式を併せて少数の株式とすることをいいます。
株式の併合は、
・株価を引き上げる
・資本を減少させる
・合併に伴う合併比率の調整
などを目的として行われます。
株式の併合をしようとするときは、
その都度、「株主総会の決議」によって、以下の事項を定めなければなりません。
・「併合の割合」
・株式の併合が「効力を生ずる日」
・種類株式発行会社である場合には、「併合する株式の種類」
この株主総会の決議は、「特別決議」が必要です。(会社法309条2項4号)
株式の併合 | 株主総会の「特別決議」が必要 (株主の利益に重大な影響があるため) |
株式の分割 | 株主総会の普通決議 (取締役会設置会社では取締役会の決議)で決定 |
株式の無償割当て |
株式の併合が行われると
例えば9株しか持たない株主は、株主としての地位を失います。
(「10株を、1株とする」場合)
また、10株以上を持つ株主であっても端数が生じたり
譲渡が容易でなくなったりといった不利益が生じてしまいます。
つまり、株主の地位や利益に重要な影響を及ぼすものとして
この決定には特別決議を必要とし、
会社は、その決議を行う株主総会の日の「2週間前」までに、
株主(および登録株式質権者)に対し、
「併合の割合」「効力を生ずる日」などを通知しなければならない
とされています。
(この通知は、「公告」をもってこれに代えることができます。)
また、取締役は、株主総会において、
「株式の併合をすることを必要とする理由」を説明しなければなりません。
株主は、株式の併合の「効力が生ずる日」に
「その日の前日に有する株式」×「併合割合」で得られる数の株主となります。
株式の分割
株式の分割とは、出資単位を細分化すること、
例えば、「それまでの1株を、10株に分ける」ということです。
(株式の併合と逆になります。)
株式分割は、高騰している株価を引き下げて、市場での流通性を高めることなどを
目的として行われます。
つまり、外部からの資金の提供がないまま、株式数だけが増加するということで
株式の細分化ということであり、
株主にとっては、持株数に応じて株式数が無償で増加する形となります。
株式の分割をしようとするときは、その都度、
株主総会の普通決議によって、以下の事項を定めなければなりません。
・分割により増加する「割合」、分割に係る「基準日」
・株式の分割が「効力を生ずる日」
・種類株式発行会社である場合には、「分割する株式の種類」
株式の併合とは違い、株主にとって株式が増加するだけですから悪影響は少ないため
上記事項を、取締役会設置会社にあっては、「取締役会の決議」で定めることができます。
株式の併合 | 株主総会の「特別決議」が必要 (株主の利益に重大な影響があるため) |
株式の分割 | 株主総会の普通決議 (取締役会設置会社では取締役会の決議) で決定できる。 |
株式の無償割当て |
また、株式分割で株式数が増加するわけですから、
「発行可能株式総数」の問題が生じることもあります。
通常は、株式分割で発行可能株式総数を超えてしまう場合は
定款の変更が必要となります。
定款変更には株主総会決議が必要となるわけですが
「株式分割」によって発行可能株式総数を増加させる場合は
(発行可能株式総数に株式分割の「割合」を乗じた範囲で)
株主総会の決議を「しない」で、定款の変更をすることができます。
(会社法184条)
株式無償割当て
株式無償割当てとは、
株主に対して新たに払込みをさせないで(無償で)、株式の割当てを行うことをいいます。
目的は株式の分割と同様で
大きすぎる株式の単位を調整して、株式の流通を容易にすることなどにあります。
株式無償割当ては、
「全株主」に対しても、「特定の種類の全株主」に対しても、行うことができます。
無償で、株主が有する株式が増加するという点では「株式の分割」と同様ですが
株式無償割当ての場合は、
・会社が保有する「自己株式」には、無償割り当てができない。
・株主に、「自己株式」を割り当てることができる。
・同種または異種の株式を割り当てることができる。
などの点で「株式分割」とは異なります。
- | 株式の分割 | 株式の無償割当て |
---|---|---|
株式の種類 | 同一種の株式数が増加 | 同一又は異種の株式を交付することができる |
自己株式 | 自己株式も増加する | 自己株式には割当てできない |
自己株式の交付 | 自己株式を株主に交付 できない | 自己株式を株主に交付 できる |
「株式無償割当て」をしようとするときは、
その都度、以下の事項を定めなければなりません。 (会社法186条)
- 株主に「割り当てる株式の数」(株式の種類、種類ごとの数)又は「数の算定方法」
- 当該株式無償割当てが「効力を生ずる日」
- 「種類株式発行会社」の場合は、「無償割当てを受ける株式の種類」
この決定は、株主総会の決議(取締役会設置会社は、取締役会の決議)で行います。
(ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでありません。)
「割り当てる株式の数」は、株式(割当てを行う種類の株式)の数に応じて行います。
株主は、「効力発生日」に、割当てを受けた株式の株主となり、
会社は、「効力発生日」後、遅滞なく、
株主および登録株式質権者に対して、
その株主が割当てを受けた「株式の数」(株式の種類、種類ごとの数)を
通知しなければなりません。
(会社法187条)
関連ページ
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