会社法の条文と解説

株式会社の機関

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株式会社の機関

機関とは

会社法2章「第4章 機関」において、株式会社の「機関」についての規定が置かれています。

株式会社は法人として
自然人と同様の権利能力を持ち、法律行為を行い、社会の中で活動を行います。

ただし、自然人と違い、手足を持っているわけではありませんので
法人の行為は、法人に属する自然人が行為を行い、それを法人の行為とみなす、ということになります。

株式会社という法人のなす「意思決定」「業務執行」「取引」などを実際に行う「自然人、自然人の集まり」を「機関」といいます。
(法人中の、自然人によって構成される、法人の行為をなす地位のことを「機関」というわけです。)

機関の種類

株式会社の機関にあたるものとして
株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人
があります。
(委員会設置会社では、株主総会、取締役会、委員会、執行役、代表執行役、会計監査人
 などで構成されます。)

会社の機関を国家にたとえるなら
立法機関⇒「株主総会」、行政機関⇒「取締役」、司法機関⇒「監査役」
と考えるとイメージしやすいのではないかと思います。

現在の主な機関設計パターンである「株主総会」+「取締役会」+「監査役」の場合、
「株主総会」で、経営者である「取締役」が3名以上選ばれ、「取締役会」が構成され、
「取締役会」で、業務執行者である「代表取締役」が選ばれ、
「代表取締役」の業務執行について、「取締役会」が監督し、「監査役」が監査し、
その結果が株主総会に報告される、
という流れが作られます。



会社法では、取締役、会計参与、監査役、会計監査人の資格、員数、任期について
以下の通り規定されています。

役員等の資格・員数・任期
取締役資格等・法人、成年被後見人、被保佐人、禁錮以上の刑に処されてその執行が終了していない者等は、取締役になることができない。
公開会社は、取締役を株主に限定する旨の定款を定めることができない
取締役会設置会社は、取締役は3人以上置かなければならない。
任期・取締役の任期は、原則
 選任後2年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会の終結の時まで。
 (定款、総会決議で、短縮できる)
非公開会社は、
 選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時
 まで伸長可。
委員会設置会社の場合は
 選任後1年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会の終結の時まで。 
会計参与資格等・会計参与は、
 公認会計士監査法人税理士税理士法人でなければならない。
・株式会社またはその子会社の
 取締役、監査役、執行役、支配人その他の使用人との兼任禁止。
任期会計参与の任期は、取締役の任期の規定を準用する。
監査役資格等・法人、成年被後見人、被保佐人、禁錮以上の刑に処されてその執行が終了していない者等は、監査役になることができない。
公開会社は、監査役を株主に限定する旨の定款を定めることができない。
・株式会社またはその子会社の取締役、支配人その他の使用人との兼任禁止。
・子会社の会計参与、執行役との兼任禁止。
監査役会設置会社は、監査役は3人以上
 その半数以上は社外監査役でなければならない。
任期・監査役の任期は、
 選任後4年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会の終結の時まで。
 (任期の短縮はできない)
非公開会社においては
 選任後10年以内に終了する事業年度の最終定時株主総会の終結の時まで
 伸長できる。
会計
監査人
資格等公認会計士または監査法人でなければならない。
任期・会計監査人の任期は、
 選任後1年以内に終了する事業年度の最終の定時株主総会の終結の時まで。
・定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、
 当該定時株主総会において再任されたものとみなす。


機関設計のルール

会社法は、株式会社の機関設計について従来までの規制型をやめ、
定款自治の考え方に基づいて、
かなり自由度の高い機関設計を認めています。(機関設計自由の原則

つまり、会社法の定める「基本ルール」に基づいたうえで
その会社のニーズに応じた機関設計が可能となっているわけです。

では、「基本ルール」についてみて行きましょう。

すべての株式会社は、
 株主総会および取締役を置かなければならない。

これが「基本の基本」ルールとなります。

旧商法においては、
株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役
が必須機関とされていましたが

新会社法においては
株主総会」と「取締役」のみが必須機関とされているわけです。

その上で、以下のようなルールが規定されています。



会社法326条 (株主総会以外の機関の設置)

1 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。
 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人又は委員会を置くことができる。


会社法327条 (取締役会等の設置義務等)

1 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
  一  公開会社
  二  監査役会設置会社
  三  委員会設置会社
 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
 会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
 委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。
 委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。


会社法328条 (大会社における監査役会等の設置義務)

1 大会社?公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。




まとめると、以下のようになります。

《機関設計の基本ルール》

株式会社株主総会」と「取締役」を置かなければならない。
公開会社取締役会」を置かなければならない。
監査役会の設置会社は
委員会設置会社は
取締役会の設置会社は
(委員会設置会社を除く)
監査役」を置かなければならない。
公開会社でない会計参与 設置会社は、この限りでない
会計監査人 設置会社は
(委員会設置会社を除く)
監査役」を置かなければならない。
委員会設置会社は監査役を置いてはならない。(監査委員会を設置する)
会計監査人」を置かなければならない。
大会社?
非公開会社を除く)
(委員会設置会社を除く)
監査役会」と「会計監査人」を置かなければならない。
公開会社でない大会社会計監査人」を置かなければならない。


機関設計のパターン

これらの基本ルールの下で、
会社のニーズに合わせた自由な機関設計を行ってよい、ということなのですが
可能な機関設計は、「39パターン」にもなります。

39もあると少し複雑に感じられると思いますが
大会社か否か」「公開会社か否か」で分類すると、
可能な機関設計パターンがわかりやすくなります。

大会社とは、
「最終事業年度にかかる貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上、または、
 最終事業年度にかかる貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上
である会社をさします。

公開会社とは
「譲渡制限がない」株式を、1株でも発行している会社をいい、
非公開会社は、
発行するすべての株式について「譲渡性がある」会社をいいます。

大会社の機関設計パターン》

公開会社非公開会社大会社の機関設計パターン
公開会社取締役会+監査役会+会計監査人
●取締役会+三委員会+会計監査人+執行役
非公開会社取締役会+監査役会+会計監査人
取締役会+監査役+会計監査人
取締役+監査役+会計監査人
●取締役会+三委員会+会計監査人+執行役



中小会社」(非大会社)の機関設計パターン》

公開会社非公開会社中小会社の機関設計パターン
公開会社取締役会+監査役
取締役会+監査役会
取締役会+監査役+会計監査人
取締役会+監査役会+会計監査人
●取締役会+三委員会+会計監査人+執行役
非公開会社取締役
取締役+監査役
取締役+監査役+会計監査人
取締役会+会計参与
取締役会+監査役
取締役会+監査役会
取締役会+監査役+会計監査人
取締役会+監査役会+会計監査人
●取締役会+三委員会+会計監査人+執行役

 *注1)株主総会はすべての株式会社の必須機関です。
 *注2)会計参与はすべてのパターンで「設置可能」です。
  (会計参与の有無を入れると39パターンとなります。)




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