会社法の条文と解説

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社債管理者

社債管理者とは

会社は、社債を発行する場合、
「社債管理者」を定め、
社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債管理を
委託しなければなりません。　（会社法702条）

社債管理者の設置義務の「免除」

ただし、以下の場合は社債管理者の設置義務は免除されます。

　・各社債の金額が1億円以上である場合

　・「社債の総額」を「当該種類の各社債の金額の最低額」で除して得た数が
　　「50を下回る」場合
　　　（縁故募集など、債権者が少数であり、直接会社との交渉が可能だからです。）

社債管理者になれるもの

なお、社債管理者になれるのは以下に限られます。

①　銀行
②　信託会社
③　その他法務省令で定める者

・担保付社債信託法第3条の免許を受けた者
・株式会社商工組合中央金庫
・農業協同組合、農業協同組合連合会
・信用協同組合、協同組合連合会
・信用金庫、信用金庫連合会
・労働金庫連合会
・長期信用銀行
・保険業法第2条第2項に規定する保険会社
・農林中央金庫

社債管理者の権限

社債管理者は、社債権者のために、債権の弁済を受け、
債権の実現を保全するために必要な「一切の裁判上又は裁判外の行為」をすることができます。
（会社法705条）

ただし、

①　社債の「全部についの支払の猶予」、債務の不履行の「責任の免除」又は「和解」

②「社債の全部についての訴訟行為」
　「破産手続」「再生手続」「更生手続」「特別清算に関する手続」に属する行為

については、社債権者集会の決議を経なければなりません。　（会社法706条）
（社債権者の重大な利害に関するものであるため）

（もっとも、②については、
　「募集事項」に定めを設けることで、社債権者集会を経ないですることも可能です。）

社債管理者による発行会社の「調査」「その他の権限」

債券管理者が、その権限を行使するにあたって
社債発行会社の「業務や財産の状況」を調査することができます。
（ただし、権利濫用防止の観点から「裁判所の許可」を受けることが必要です。）

その他、社債管理者は以下の権限を持ちます。

・社債権者集会の招集　（会社法717条）
・社債権者集会に、社債管理者の代表者を出席させること　（会社法729条）
・社債権者集会の議事録の閲覧・謄写の請求　（会社法731条）
・社債権者集会の決議の執行　（会社法737条）

社債管理者の義務

社債管理者は、社債発行会社との委託契約により管理業務を行うわけですから
当然、社債発行会社に対して「善管注意義務」を負います。

けれども、社債権者との間には契約関係はありません。

そこで会社法704条では
社債権者に対して「公平誠実義務」「善管注意義務」を負うことが明記されています。

また、社債管理者である銀行などが、社債発行会社に対して貸金債権を有している場合、
社債権者への弁済と、社債管理会社自身への弁済との「利益相反」が生じる可能性があります。

このような場合、
社債権者のために、裁判上又は裁判外の行為をする必要があるときは
裁判所は、社債権者集会の申立てにより、
「特別代理人」を選任しなければなりません。　（会社法707条）

社債管理者の責任

社債管理者は、
「会社法」または「社債権者集会の決議」に違反する行為をして損害が発生した場合、
社債権者に対し、連帯して、損害を賠償する責任を負います。

また、社債管理者が、
社債発行会社に社債の償還、利息の停止等があった「後」又は「その前3箇月以内」に、
社債発行会社から「担保の供与を受ける」「債務を消滅してもらう」などの
「利益相反」行為を行った場合は
社債権者に対し、損害を賠償する責任を負います。

（社債管理者が免責されるには、
　無過失、因果関係の不存在を、自ら証明しなければなりません。）

社債管理者の辞任・解任

社債管理者の辞任

社債管理者は、以下の場合に「辞任」することができます。

①「社債発行会社」及び「社債権者集会」の「同意」を得た場合。

　（ただし、社債管理者は、
　　あらかじめ、事務を承継する社債管理者を定めなければなりません。）

②「委託契約に定めた」辞任の事由が生じた場合。

　（ただし、この契約自体にに
　　事務を承継する社債管理者に関する定めがあることが前提）

③「やむを得ない事由」があり、裁判所の許可を得た場合。

社債管理者の解任

また、「解任」については
社債管理者の「義務違反」「不適任」「その他正当な理由があるとき」、
「社債発行会社」または「社債権者集会」の裁判所への申立てにより、
社債管理者を「解任」することができます。

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