相対的記載事項
定款② 相対的記載事項
定款に記載する事項は次の3つがあります。
・絶対的記載事項 …記載しなければ定款自体が無効になる
・相対的記載事項 …決定したら記載しなければならない
・任意的記載事項 …記載するかどうかは自由
このページは、相対的記載事項についてです。
相対的記載事項と変態設立事項
相対的記載事項とは、
絶対的記載事項のように記載しなければ定款自体が無効というわけではないですが
その事項について定款に定めておかないとその効力が否定されてしまうものをいいます。
(つまり、決定したら記載しなければならない、ということです。)
相対的記載事項には以下のものがあります。
①現物出資
②財産引受
③発起人の報酬
④設立費用
⑤株式の譲渡制限に関する規定
⑥株主総会の招集通知を出す期間の短縮
⑦役員の任期の伸長
⑧株券発行の定め
この中で特に①~④の4つについては「変態設立事項」と呼ばれ
発起人等がその権限を濫用して会社に不利益を与える危険性が高いものとされています。
ですから「変態設立事項」の4つ(会社法28条)については、
定款に書き、裁判所の選任した「検査役」の調査を受けなければならない
という規定が置かれているわけです。(会社法33条)
では、①~④の変態設立事項から見て行きましょう。
変態設立事項
①現物出資
株式を引き受ける場合、通常は、株式の対価として金銭を出資します。
けれども、発起人の場合は、金銭以外の出資が認められています。
例えば設立後の会社が事業用として使う土地を「発起人が提供」する場合などです。
これを「現物出資」というのですが
金銭による出資と違い、このような財産については評価の問題が生じます。
もしも価値のない土地を過大に評価すれば
その分だけ会社の財産的基礎が弱まりますし、
土地を提供して株式を受取る発起人と、他の出資者との間にも不平等が生じます。
そこで会社法では
現物出資がある場合は必ず定款に記載し、
検査役の調査が義務付けられているのです。
②財産引受
「財産引受」とは、
発起人が、会社の成立を条件に会社のために、第三者との間で
ある財産を譲り受ける契約を締結することをいいます。
例えば、設立後の会社が使うビルを、第三者から取得する契約などです。
このビルは、もちろん発起人が取得するわけではなく
設立後の会社が所有権を取得することになるわけですが、
この場合でも、発起人が過大な対価の契約をしてしまうと
会社の財産基盤が損なわれることになります。
また、発起人が、現物出資の規制逃れをするために
第三者を使って財産引受を使う可能性もあるわけです。
そこで会社法は、財産引受を、現物出資と同じ規制下に置き、
定款への記載を義務付け、
記載がなければ第三者との契約を無効とすると定めているのです。
③発起人の報酬
会社設立に尽力した発起人は、設立後の会社からその報酬を受けるわけですが
発起人が自ら報酬を任意に決めると不当な結果になるおそれがあります。
そこで「発起人の報酬」も定款に記載させることとしています。
④設立費用
会社設立のために発起人が費用を使った場合、
その費用を設立後の会社に請求するのは当然なわけですが、
その際、会社に過大な請求をすることがあれば
会社の財産的基盤が損なわれることになります。
そこで「設立費用」も定款に記載させて検査役の調査を受けることとされています。
検査役の調査が不要となる場合
上記の変態設立事項の4事項は
「当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。」
わけですが、
「現物出資」と「財産引受」については以下の場合、検査役の調査が不要となります。
①定款に記載された価額の総額が「500万円を超えない」場合
②市場価格のある有価証券について、定款に記載された額が「市場価格を超えない」場合
③価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、監査法人等の証明を受けた場合
その他の相対的記載事項
相対的記載事項には、変態設立事項のほかに
・株式の譲渡制限に関する規定
・株主総会の招集通知を出す期間の短縮
・役員の任期の伸長
・株券発行の定め
などがあり、これらを決定した場合は定款に記載しなければ効力が認められません。
会社のいわば憲法である定款にきちんと記載して初めて
会社のルールとして認められる事項、ということです。
「株式の譲渡制限に関する規定」もそのひとつです。
小さな会社が、誰かに会社を支配されてしまうことを事前に防止するためなどの目的で
この株式の譲渡制限の規定が置かれています。
定款に、「等会社の株式を譲渡するには、あらかじめ取締役会の承認を受けなければならない」
などの規定を定款に定めることで、株式譲渡を会社のコントロール下に置くわけです。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、
定款に記載するかしないかについて、会社の任意とされている事項です。
絶対的記載事項、相対提起記載事項以外は
定款に記載しなくてもその効力は認められるのですが
定款に記載することで、定款変更の手続きを取らない限り変更できない
という利益が生まれます。
任意的記載事項には制限はなく、なんでも規定することができます。
取締役の権限、監査役の員数、事業年度、定時株主総会の招集日などです。
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