会社法の条文と解説

募集株式の発行

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募集株式の発行

株式を使った資金調達には
株式の新規発行」と「自己株式の処分」があります。

「自己株式の処分」とは、株式会社が保有する自社の株式を売却して資金を得る方法です。

会社法では、この「新株発行」と「自己株式の処分」を、「募集株式の発行」としています。

そして、
募集株式の発行等」の割当てには
株主割当て」「第三者割当て」「公募」の3つの方法があります。

会社法、募集株式の割当て

募集事項の決定

募集株式の発行等(新株発行、自己株式処分)を行う場合、
「株式を引き受ける者」の募集が必要になります。

そのために、まず、「募集事項の決定」を行います。

「募集事項」には以下があります。

  • ① 募集株式の数
  • ② 募集株式の払込金額、または算定方法
  • ③ 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨、その財産の内容、価額
  • ④ 払込み、給付の「期日」又は「その期間」
  • ⑤ 株式を発行するときは、増加する資本金・資本準備金に関する事項

この決定方法をまとめると以下となります。

割当て方法割当先決定方法
非公開会社公開会社
株主割当て株主
(申込をした株主)
株主総会の特別決議

(1年以内の期間に限り、取締役・取締役会に決定を委任できる。
委任には株主総会の特別決議が必要)

(募集株式の種類が譲渡制限株式 ⇒種類株主総会)
取締役会の決議

(有利発行の場合は
株主総会の特別決議
第三者割当て特定の第三者
公募不特定多数

     *株主割当ての募集事項決定は、下記参照。

公開会社の場合

公開会社においては、募集事項の決定は「取締役会」で行います。 (会社法201条

(ただし、②の金額がとくに有利なものである場合(有利発行)は、
 株主総会の特別決議が必要となります。)

「取締役会の決議によって」募集事項を定めたときは、
払込期日(払込期間の初日)の「2週間前」までに、
株主に対し、当該募集事項を「通知」しなければなりません。

(既存の株主にとって、新たな株式発行は、
 持株比率の変更や、株式の経済価値の変動によって不利益が生ずる可能性があるため)

(この通知は、「公告」をもってこれに代えることができます。)

ただし、金融商品取引法で規定された届出をしている場合等は、通知・広告は不要です。

非公開会社の場合

非公開会社の会社の「募集事項の決定」は
原則として、株主総会の特別決議で行います。

ただし、
払込・給付の期日(その期間の末日)が「決議の日から1年以内の日」である募集については
取締役(取締役会)に「委任」することができます。
(委任することを決めるには、株主総会の特別決議が必要です。)
(この場合、あらかじめ、株主総会の特別決議において
 「募集株式の数の上限」及び「払込金額の下限」を定めなければなりません。)

また、
募集株式の種類が「譲渡制限株式」であるときは、
募集事項の決定は、
当該種類の株式の「種類株主を構成員とする種類株主総会の決議」が必要となります。

「株主割当て」の場合

「株主割当て」の場合は、原則、株主総会の特別決議が必要ですが
 (公開会社では、取締役会の決議でよい。)
「定款で定めることにより、取締役・取締役会の決定事項」とすることができます。

株主割当ての決定があったときは、
株主がこれを知らなければ、申し込むことができず、
割当てを受ける権利を失ってしまいますので、

申し込み日の「2週間前まで」に、
株主に対し、「募集事項」「当該株主が割当てを受ける募集株式の数」「申込の期日」
を「通知」しなければなりません。 (会社法202条

株主は、「持株数に応じて、割当てを受ける権利を有します」。
(ただし、1株に満たない端数は切り捨てられます。)

申込、割当て、出資の履行

申込

募集に応じて引受をしようとする者は、書面(会社が認めるときは電磁的方法)に
一定事項を記載し、申込をします。 (会社法203条

割当て

株式会社は、「募集株式引受けの申込者」の中から
「割当てを受ける者を定め」、かつ、「その者に割り当てる募集株式の数を定め」ます。

誰に割り当てるか、何株割り当てるか、について会社に裁量権があり(割当て自由の原則)、
申込者に割り当てる募集株式の数を、申込数よりも減少することができます。
 (会社法204条

ただし、募集株式が「譲渡制限株式」に場合は、
割当てについての決定は、株主総会の特別決議によらなければなりません。
(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)

株式会社は、申込者に対し
払込期日(期間の初日)の前日までに
「割り当てる募集株式の数」を通知しなければなりません。
(出資の履行ができなくなるため)

出資の履行

募集株式の引受人は、定められた「金銭の払込み・財産の給付の期日」(期間)に
金銭の払込み、財産の給付をしなければなりません。

(募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、募集株式の株主となる権利を失います。)

出資の履行をした者は、「履行した日に」、募集株式の株主となります

募集株式の引受人は、「払込み・給付債務」と「株式会社に対する債権」とを
相殺することはできません。
(会社が相殺することは禁じられていません。)

【現物出資の場合】
出資の履行を「現物出資」で行う場合、
出資された財産の価額が問題となります。(本当にその価値を有するかどうか)

ですから、会社が募集事項に「金銭以外の財産を出資の目的とする」事項を定めたときは、
「現物出資財産」の価額を調査させるため、
裁判所に対し、「検査役」の選任の申立てをしなければならず、

検査役の調査の結果、その価額が不当であると認めたときは、
裁判所は、これを変更する決定をしなければなりません。

これに対して、不服のある現物出資者は
この決定後、1週間以内に限り、引受けを取消すことができます。 (会社法207条





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