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社債発行の活発化と会社法

会社が、外部から資金を調達するには
「株式による方法」(募集株式の発行新株予約権の発行)と
「債務による方法」(銀行からの借入、社債の発行)があります。

「債務による方法」では、経済のグローバル化や金融市場の拡張・自由化の中で
「銀行からの借入」という従来型から、
市場を通じて資金調達を行う「社債」発行へのシフトが生じています。
(間接金融から直接金融へ)

こうした経済状況の転換の中で会社法が成立し、
社債についても新たな法整備が行われました。

これまで(旧会社法・商法の時代)は有限会社は社債発行ができませんでしたが、
新会社法では
株式会社は無論、合名会社をはじめすべての会社の類型において社債発行が可能となり、
発行に際して最低限定めるべき事項が明確化されるなど
より機動的な社債発行が可能となる様々な仕組みが導入されています。

社債と株式

社債とは、会社が公衆から借り入れる金銭債務です。

ではまず、社債と株式の違いから見て行きましょう。

《社債と株式》

-社債株式
利息・配当会社の利益と関係なく、あらかじめ決められた「利息」が支払われる。会社に、配当可能な利益がある場合に限り、配当が行われる。
権利者の地位外部の債権者持分権を有する会社所有者
払い戻し・償還定められた期限の到来により「償還」される。払い戻しは、なし。
投下資金の回収には、株式の他者への譲渡が必要。
会社解散時の
残余財産の分配・弁済
他の債権者と同一順位で、株主に優先して弁済を受ける。一般債権者、社債権者に弁済した残りの財産について分配を受ける。
経営に関する権利なし株主総会の議決権、監督是正権など

株式は、
会社の業績がよければ、社債の利息より多くの配当を受ける可能性があり、
株価が上昇すれば、株式の譲渡によってキャピタル・ゲインを得ることも可能です。

逆に、会社の業績が悪ければ、配当ゼロ、キャピタル・ロスの可能性もあり、
会社が倒産すれば、株式価値はなくなり、債権者への弁済後の財産もほぼゼロと考えられます。

一方で、社債は、業績に関係なく、あらかじめ定められた利息が支払われ、
倒産時も優先的に弁済を受ける権利を有します。

公衆からの資金の調達という面からみれば、株式も社債も同様なのですが
実際には、投資家にとっても、発行する会社にとっても大きな相違があり、
メリット・デメリット双方があるわけです。

社債の発行

では、社債の発行手続きについて見て行きましょう。

会社は、社債を発行する際は、
その都度、募集社債について、以下の事項を定めなければなりません

 ①「総額

 ② 各社債の「金額

 ③「利率

 ④「償還の方法・期限

 ⑤「利息支払の方法・期限

 ⑥「社債券」を発行するときは、「その旨」

 ⑦ 社債権者が「記名式を無記名式に」「無記名式を記名式に」する請求
   全部又は一部をすることが「できない」とするときは、「その旨」

 ⑧ 社債管理者が、「社債権者集会の決議によらずに
   訴訟行為、破産手続、再生手続、更生手続、特別清算に関する手続行為
   をすることが「できる」とするときは、「その旨」

 ⑨ 各社債の「払込金額」若しくは「その最低金額」(又はこれらの算定方法)

 ⑩ 金銭の「払込みの期日

 ⑪「一定の日までに」総額について割当てを受ける者を「定めていない」場合、
   募集社債の「全部を発行しない」とするときは、「その旨」「その一定の日」

 ⑫ その他、法務省令で定める事項

社債発行の円滑化のために、「取締役会設置会社」においては、
「募集社債の総額の上限」「利率の上限」「払込み金額の総額の最低金額」などを
取締役会で決定して、
これら以外の事項については、取締役に決定を委任することができます。(会社法362条4項5号)

社債発行の方法

社債の発行方法には、大きく分けると
「総額引受」と「募集発行」があります。

総額引受」は、証券会社との間で引受契約を締結し、発行する社債の全てまたは一部を包括的に引き受けさせる方法です。
(証券会社は、引受けた社債を一般公衆に売り出します。)

募集引受」には
社債を発行する会社が、自ら、社債権者を募集する「直接募集」と
銀行や信託会社に募集を委託する「委託募集」があります。
(実際には、委託募集がほとんどです。)

通知、申込、割当、払込

募集発行(直接募集)の手続きは以下です。

①通知 …引き受けの申し込みをしようとする者に「募集事項」等を通知する。
②申込 …申込をしようとする者は、指名・住所、金額、数などを記載した書面を提出。
③割当 …申し込みに対して、会社が割当を行う。(割当によって社債契約が成立)
④払込 …社債権者となった者は、指定されている「払込日」に払込を行う。
   (金銭以外の財産給付の契約がある場合は、その給付を行う。)
   (払込は、全額の払込が原則だが、「分割」払込の方法を定めることも可能)

社債の流通

社債は、「社債券」を「発行するもの」と「しないもの」があります。

募集事項に「社債券の発行が定められている」ときは、
会社は、社債の発行後、遅滞なく、社債券を発行しなければなりません。(会社法696条
(社債券に記載すべき事項は、会社法679条1項に定められています。)

また、社債には「記名式」と「無記名式」があります。

記名式の社債 
…「社債原簿」に社債権者の氏名・住所が記載される社債
 (社債券が発行されるものと、されないものがある)

無記名式の社債 
…無記名社債の場合は、常に「社債券」が発行されます。

「無記名」社債の流通

無記名社債は、動産とみなされ、その譲渡は、社債券の交付によって行われます。
(質入については、社債券の交付によって効力が生じます。)
(社債券の「占有」継続が、第三者への対抗要件です。)

「記名」社債の流通

記名社債の譲渡・質入は、
社債券が発行されている場合は、その交付によって
発行「されていない」場合は、意思表示によって効力が生じますが、
会社その他の第三者に対抗するためには「社債原簿の名義書き換え」が必要となります。

社債の利払い

社債の「利息の支払い」は、「募集事項」に基づいて行われます。 (会社法676条
(会社の利益にかかわらず、
 募集事項に定められた支払時期、方法、利率に従って支払われます。)

無記名社債の場合は、
社債券に「利札」が添付されていて、この利札と引き換えに利息が支払われます。
(利札そのものが、社債券から引き離されて独立して流通すると、
 利札が利息の支払い請求件を表章する有価証券となります。)

また、「割引発行」といって
社債券に利札がなく、償還時に利息全部を支払う方法もあります。
(社債券の「券面額」から「利息相当額」が差し引かれた額で発行されます。)

社債の償還

会社が、社債権者に対して、社債の内容となっている借入金を返済することを
「社債の償還」といいます。

償還方法も、「募集事項」に定められ、これに従って償還されます。

そして、会社が、
・定期に社債の一部を償還すべき場合に、償還を怠った時
利息の支払いを怠った時
社債権者は、法に基づく手続きにより、
社債の総額について「期限の利益を失わせる」ことができます。 (会社法739条
(会社は、直ちに、全額を償還する義務を負います。)

また、「社債管理者」が、社債権者のために社債に係る弁済を受けた時は
社債発行会社の債務は消滅し、
社債権者は、社債管理者に対して、償還・利息の支払いを請求することになります。





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